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ひと夏の恋……そして……
第13章 私の心はどこに
「真緒さん?」
「あっ、はい!」
いきなり名前を呼ばれ大声をあげて返事をしてしまうと、佐伯さんに笑われた。
「時々、私といると緊張していますよね。普通に話すこともあれば、こうやって緊張したように予防線を張る」
「そう……でしょうか?」
そんな気は全然ないし、緊張しているように見えるのは和泉を思い出しているからで、それを佐伯さんに言えるわけもなく口ごもるしかなかった。
「困らせてしまったようですね。すいません」
「いえ、私のほうこそすいません」
お互いに頭を下げて変な空気が漂いだした。
「それで?この絵のモデルの場所はあるんですか?」
「あっ。はい。車で15分ぐらい行った砂浜の写真なんです」
もう一度絵のことを聞かれ、今度はきちんと答えることができた。
佐伯さんは、その絵をしばらく眺めた後、私の方に振り替える。
「真緒さん。よろしかったらあさっての夕方、案内していただけませんか?真緒さんと真和くんと一緒に見たいですね」
その言葉に、ビクッと肩を震わせた。
まさか、もう一度、あの場所に行くとは思ってもいなかった。