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ひと夏の恋……そして……
第14章 花火大会と決意
「あっ!千春兄ちゃんだ」
人込みの中、真和は叫びながら人波をかき分けて走っていく。
「真和?」
待ち合わせをしていても人の多さにどこに佐伯さんがいるのかとキョロキョロしながら真和を追いかけると、人ごみから少し離れた所に格子柄の浴衣を着た佐伯さんが立っていた。
身長も高くて整った顔をしている佐伯さんは目立っていて、何を着ても似合う人だと改めて思う。
「千春兄ちゃん!!」
佐伯さんは真和に気が付くと、腰を落として真和を受け止めて仲良く話している。
今日は真和も甚平を着ているから親子と言っても誰も疑わない、そんな雰囲気を醸し出している。
そこに履きなれない下駄で近づいて声をかければ、見上げた佐伯さんは驚いた顔を見せる。
「どうかしましたか?」
何に驚いているのか分からず首を傾げれば、佐伯さんは口を手で覆って言葉を出し渋る。
「いえ、浴衣姿が……」
やっぱり似合わないよねと、少し気持ちが沈んだ。
普段はラフな姿が多いから、女っぽい浴衣は変だったかもしれない。