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ひと夏の恋……そして……
第14章 花火大会と決意
「すいません。ずっと肩車をしてもらって、重くないですか?」
一通り出店を見て回って落ち着いた頃に頭を下げると、佐伯さんは私の手を取って繋いだ。
驚いて手を引っ込めようとしても離してはくれなかった。
「大丈夫ですよ。まだまだ真和くんは軽いですから。それに、父親の雰囲気を味わえて私の方こそ楽しいんですよ」
手を繋がれて驚く私に、そんな事実がないかのように佐伯さんは言葉を続ける。
それ以上に父親の雰囲気という言葉に反応して佐伯さんを見上げれば、佐伯さんの頭にしがみつきながら楽しそうに笑っている真和の姿が目にとまった。
肩車をしている佐伯さんと、されている真和。
そして手を繋いでいる私たちは、どこからどう見てもひとつの家族だった。
もし、あの時、和泉と別れることがなければこんな風に家族として過ごしていたのかもしれない、真和の成長を一日一日見守り続けていたに違いないと、今の佐伯さんを見ながら思えた。
叶わぬ夢だと分かっていても思わずにはいられなかった。