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ひと夏の恋……そして……
第15章 私が下した決断
「本当に違いますから気にしないでください。――ただ少し昔のことを思い出していたんです」
「昔の事ですか?」
「はい。佐伯さんは私が育ったのがこの島じゃないことはご存じですよね」
「ええ。失礼は承知で調べさせてもいました。申し訳ない」
「いいんですよ。仕事上必要だったんでしょう?」
私の過去を調べたことに頭を下げる佐伯さんに気にしないでほしいと声をかけた。
きっと、私以外にもこの島の事はいろいろと調べているはずだから。
それが、これからの島の発展に繋がれば良いと思っている。
「そう言っていただけると気が楽になります」
「本当に、佐伯さんって不思議な人ですね。前の担当の方とは大違い」
「あの人は……会社を大きくすることしか考えていませんからね。上に立つ者としては当然かもしれませんが、やり過ぎは不満を買うだけ。事をうまく進めるには寄り添うことも大事かと。心を開けば相手も開く。そう私は思います」
佐伯さんの言葉に、やっぱりこの島を託すには彼しかいないと感じた。
島に寄り添い、私たちの想いを理解しようとしている佐伯さんに。
そんな人だから私は話したかった。