この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
ひと夏の恋……そして……
第15章 私が下した決断
『真緒?真緒?』
通話ボタンを押せば、何度も私の名前を呼ぶ夏樹。
久しぶりに聞く夏樹の声にほっとして涙がこぼれだした。
『真緒?聞こえてるのか?聞こえてるなら返事をしてくれ』
「なつ……きっ」
何度も私の名前を呼ぶ夏樹に返事をしたいのに言葉が出てこず、嗚咽を上げながら夏樹の名前を呼んだ。
泣いている間、夏樹は何も言わずに黙って待っていてくれた。
そのやさしさに甘えて泣き続けた。
何も話さなくても、電話一本だけでも、人と繋がれたうれしさ。
今までずっと一人で頑張ってきた私には、これだけで十分だった。
そして、泣き止んだ私に夏樹は一言だけ、こう言った。
『今から迎えに行くから。どこにいるんだ?』
「それはっ」
夏樹も中絶を進めるんじゃないかと怖くなる。
『安心しろ。おろせなんて言わね~よ。それにそんな時期は過ぎただろう?』
夏樹の言っている意味は分からなかったけど、一人で過ごすには限界だと分かっていた私は、夏樹の言葉を信じて居場所を告げた。