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ひと夏の恋……そして……
第15章 私が下した決断
お風呂から上がれば、あたたかなミルクを出してくれて本当に心身ともに休めることができた。
その間、夏樹は何も言わない。
勝手に家を出たことも、和泉の子供を産みたいという私を叱ることもなかった。

「怒らないの?」

それが不思議で聞けば、夏樹は笑う。
それは今までと変わらない笑顔だった。

「なんだ?怒られたいのか?」

「ううん……」

「怒られたいのなら怒ってやるけど?」

夏樹は何事もなかったかのように私との言葉のかけあいをする。
お腹の中に新しい命がいないかのように。
それが寂しくてお腹を両手で包むと、その手に夏樹の手が重なった。

「ここに和泉との子供がいるんだよな、そして真緒が母親か、なんか不思議だな」

私の大きくなったお腹をなでながら、少し寂しそうに笑う。
その寂しそうな表情を見て、夏樹を苦しめていることに気がついた。
夏樹を裏切って出来た和泉との子供。
そんな子供を夏樹が喜ぶわけもないし、このまま助けてもらう権利は私にはない。


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