この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
ひと夏の恋……そして……
第15章 私が下した決断
「夏樹……ごめん」
「何がごめんなんだ?」
夏樹はお腹をさするのをやめることなく口にする。
「私は夏樹を裏切ったんだよ。夏樹に見捨てられることはあっても助けてもらう権利はないの。だから――私の事は忘れて」
和泉との間に出来が子供共々、夏樹に迷惑をかけることはできないから、それが一番良い選択だと思った。
だけど、夏樹の考えは違った。
「何で俺がお前を見捨てなきゃならないんだよ」
「だって私は夏樹より和泉を選んだんだよ。あんなに親切にしてくれたのに恩を仇で返すように裏切ったんだよ」
あの時、家の前で私を追い詰める夏樹の苦悶に歪む表情が鮮明に思い浮かぶ。
あの優しかった夏樹を、私はただただ苦しめ傷つけた。
「私は……夏樹に酷いことばかりした。そんな私が夏樹に助けてもらうなんてできないよ。これ以上、苦しめたくないよ」
言葉にしながら、自分がやってしまった過去を悔やんだ。
和泉を好きになったことに後悔はないけど、夏樹を苦しめたことは別問題だった。