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ひと夏の恋……そして……
第15章 私が下した決断
「佐伯さん。私は夏樹と結婚します。5年間、和泉を待ち続けてきましたけど、やっと前に進もうと決めました。佐伯さんに出会い、和泉が戻ってきてくれたような感じがしました。手を繋いで歩くことも、一緒に花火を見ることも、二度とできないと思っていたことができて吹っ切れたんです――佐伯さん、最後に私の背中を押してくれませんか?もう待たなくていいんだと言ってくれませんか?」
佐伯さんは驚いた顔をしていた。
いきなりこんな事を言われて驚くのも無理はない。
だけど、本人といっても良いほど似ている佐伯さんに言ってもらえれば、迷うことなく夏樹の手を取ることができる。
「お願いできませんか?」
何も言ってくれない佐伯さんにもう一度お願いする。
「私でいいんですか?」
戸惑う佐伯さんに、私ははっきりと言葉にする。
「はい。佐伯さんがいいんです。欲を言えば、少し砕けた言葉遣いと、真緒と呼び捨てにしてだけるとうれしいです」
そうしてもらえれば、より和泉に近くなる。
佐伯さんは一度目を伏せてから、ゆっくりと開いて真っ直ぐに私を見つめる。