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ひと夏の恋……そして……
第15章 私が下した決断
「それが、真緒が出した結論?」
一気に口調が変わり、名前を呼び捨てにされるとドクンッと体内の血液が沸騰する感じがした。
彼は私の言葉の意図を理解して和泉になってくれる。
それだけで、長年の想いが報われる。
「……うん。これが私の出した結論。私は夏樹と生きていく。そう決めた」
しばらくの沈黙の後、佐伯さんの手が伸びて私の身体を包み込んだ。
密着する身体からは人のぬくもりが伝わる。
目を閉じて感じれば、それは和泉の体温だと錯覚を起こす。
「和泉っ」
感極まって和泉の名前を呼べば、抱きしめる腕に力がこもる。
お互いにぬくもりを感じながら5年前に戻ったようだった。
「真緒、良く決心したね。……楽しかった時間は思い出として心に刻み、今、真緒の傍に寄り添ってくれる人と幸せになることは当然の事だと思うよ。夏樹なら大丈夫。真緒が選んだ人なら間違いはない。きっと真緒も真和も幸せになれるよ。だから僕の事は忘れて幸せになって」
和泉の声と言葉で前に進む後押しをしてくれる。
今、やっと過去から解放され前に進むことができる。