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ひと夏の恋……そして……
第15章 私が下した決断
「和泉……愛してた」
「うん、僕も真緒の事、愛してたよ」
5年ぶりに紡ぐ愛の言葉は過去形で現在形ではない。
だけど、二度と聞けないと思っていた愛の言葉に自然と涙が零れ落ちる。
「泣かないで。真緒に泣かれるのが一番辛い」
私から離れた和泉は、そっと頬に流れる涙をぬぐった。
真剣に私を見つめる瞳は和泉そのもので、私はそっと瞼を閉じた。
瞼を閉じれば唇に触れる温もり。
それだけで十分だった。
もう私は大丈夫
これで前を向いて歩いていける。
「佐伯さん、ありがとうございました。これで前に進めます」
唇が離れ一息ついて言葉を出せば、佐伯さんも穏やかに笑い口調が元に戻る。
「真緒さんなら大丈夫ですよ――夏樹さんと幸せなってください。夏樹さんと本当の家族になって3人仲良く過ごしてくださいね」
「はい。ありがとうございます。まだ真和の事が気がかりですが、ゆっくりと時間をかけて家族になっていこうと思います」
夏樹と家族になるには真和が夏樹を父親と認めなければならない。
これから少しずつ受け入れてくれたらと思う。