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ひと夏の恋……そして……
第16章 すれ違う気持ち
「これは違うの!この島の事を知りたいって言われて、でもこの時期に宿なんて空いてないから、店の2階を貸したの。それだけ、本当にそれだけで何もないよ。夏樹が心配するようなことは何もないから」
「そうなんだ。和泉に似た男を泊めたんだ。で?気持ちが和泉に似た佐伯に向いたってわけだ」
「違う違う。全然気持ちは向いてない。むしろ夏樹が良いって、夏樹じゃないとダメなんだって実感したよ」
「そうか、俺の方が良いって実感したんだ」
夏樹の言葉に、思いっきり頷いて縋るようにしがみついた。
こんなことで誤解してほしくなくて必死に弁解する。
それが余計に誤解させているとも知らずに……
「そうだよ。私が好きなのは夏樹なの。和泉でも佐伯さんでもない。夏樹なんだよ。真和だって――」
言葉を続けようとすると、縋っている手を取られて外された。
「あの時と同じだな。あの時と同じで、お前は嘘ばかり口にするのな」
「あの時?」
夏樹がいつの事を言っているの分からず聞き返せば、声を上げて笑いだした。