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ひと夏の恋……そして……
第16章 すれ違う気持ち
「夏樹??」
「分からないか。そうだなよな。あの時も今みたいに必死で取り繕っていたからな。嘘だと分かってて聞く俺の身にもなれってんだよ!!」
最後の言葉は今までに聞いた事のない荒々しい言葉だった。
……いや、違う。
遠い昔、一度だけ聞いた事がある。
夏樹に和泉との関係を秘密にしていたあの時、この家の前で和泉との関係を問い詰められた時と同じだと思い出した。
そして、夏樹の言う通り、下手な嘘で取り繕い逃げようとした。
「夏樹!!あの時と状況が違うの!」
「何が違うんだよ」
「それは、あの時は本当に和泉とつきあってたけど、今度は違うから。夏樹の誤解だから」
「何が誤解だ!あの男と抱き合ってキスまでしといて、何が誤解だって言ってんだ」
夏樹のその言葉に何も言い返せなかった。
あの場で何も言われなかったから見られていないと思っていたけど、見られてた。
夏樹からしたらあの時と何も変わらない。
私は夏樹を裏切った馬鹿な女……