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ひと夏の恋……そして……
第2章 逃げてきた場所

「夏樹さん……」

「んっ?」

長い沈黙を破ったのは私だった。

「夏樹さんとでかけるのはイヤじゃなかった。こんな私にも優しくしてくれてうれしかった。けど……私、小学校から女子校で、男性は父と兄と学校の先としか知らなくて、緊張してて……だから、夏樹さんと出かけるのがイヤだとか思ってません……」

こんな私にも優しくしてくれる夏樹さんへの誤解だけは解きたくて、それだけを言葉にした。

「そっか、イヤがられてなくてホッとした。まぁ、手を繋いだ時点でイヤがられてはないとは思ったけどな」

「えっ……あっ……私っ……」

改めて言葉にされると恥ずかしさがよみがえり、一気に顔が熱くなった。

「真緒ちゃんはかわいいなっ」

「かっ、からかうの止めてください」

「からかってなんていないって。真緒ちゃんはかわいいよ。初めて店に出た時にナンパされたじゃん。それに、真緒ちゃんが働くようになって真緒ちゃん目当ての男客増えたの気がついてない?」

「でもっ……かわいくないって……」

そう言うと、夏樹さんは少し考える。
考えて、私に向き直り真剣に私を見つめた。


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