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ひと夏の恋……そして……
第17章 会いたくて泣く

あの時は、こんな風に問い詰められても仕方がないと思った。
和泉とつきあって夏樹を裏切っていたのは事実だったから。
だけど今度は違う。
私の気持ちは揺るがない。
「彼は佐伯さんであって和泉じゃない。顔が似てても中身は違う。私たちが知っている和泉じゃない」
「だから?――和泉じゃないけど好きになったってか?」
「違う。好きになってなんかない」
「だったなんでキスをさせた!」
「それはっ」
「それだけじゃない!あの男に抱きしめられてもお前は逃げなかった。それどころか自分から抱きついて……それで好きじゃないって、俺を馬鹿にするのもいい加減にしろ!!」
何を言っても夏樹には通じなかった。
どんなに違うと言っても夏樹が私の気持ちを理解してくれることはなかった。
「夏樹……」
それでも夏樹を失いたくなくて、夏樹に伸ばそうとした手を払いのけられた。
そして、今までの荒々しい声ではなく、すべてを諦めたような弱々しい声で言った。
「もう帰ってくれ……二度と、俺の前に姿を見せないでくれ」
それは、完全な拒絶だった――

