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ひと夏の恋……そして……
第18章 伝えたい想い…
「分かったから……真緒の気持ちは良く分かったから、心にもないことするな。大事な想い出だろう」
絵にカッターを入れようとした瞬間、夏樹は私の手を止めカッターを取り上げた。
そして、その絵を額にしまい元あった場所に戻した。
「これは和泉がここにいた証だろう?それに写真も捨てなくていい。真和にとっては父親との繋がりだからな。俺たちの事で真和の思い出を捨てることはない」
「じゃあ、私の気持ち分かってくれた?伝わった?」
「ああ……伝わったよ。」
「夏樹っ」
その言葉がうれしくて夏樹に抱きついた。
久しぶりに感じる夏樹の温もりは、佐伯さんと比較にならないぐらい暖かくて私を安心させる。
これが佐伯さんと夏樹との違い。
私が未来を共にすると決めた人の確たる証だった。
だけど、夏樹を見上げると表情は曇ったままで、一気に不安になる。
「夏樹?」
夏樹の名前を呼べば、夏樹は私の肩に手を置いて身体を離された。
その空間が寂しくて、もう一度抱きつこうとしても抱きつくことは叶わなかった。