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ひと夏の恋……そして……
第19章 好きなら奪って
真和さえ笑ってくれていればそれでいい。
私と夏樹の縁が完全に切れていないと分かるだけでも、良かったと思うしかない。

「そうやって無理に笑うんですね。私の前では無理をしなくてもいいのに……」

佐伯さんの手が伸びて頬に触れた瞬間、佐伯さんと距離を取るように一歩後退ると少し寂しそうに眉をひそめた。

「ごめん、なさい。真和たちがいつ戻ってくるかわからないんです……だから、これ以上は夏樹に誤解してほしくないんです」

こんな場面をみられれば誤解が生まれる。
本当は、一緒にいない方が良いのかもしれないけど、こうやって真和のために訪ねて来てくれる佐伯さんをないがしろにはできなかった。

「すいません……」

「いいえ、それだけ夏樹さんの事が好きだということなんですから……仕方がありませんよ」

そう言葉にしながら、どこか元気がない佐伯さん。
あからさまに避けたのが傷つけることになってしまったのかと、私の方が落ち込みそうになる。


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