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ひと夏の恋……そして……
第19章 好きなら奪って
「お茶、用意しますね」
この空間がいたたまれなくなった私は、逃げるようにカウンターに入ろうとすれば、腕を取られて佐伯さんの傍を離れることができなかった。
この状況は非常にまずいと思い、握られている手を引こうとしても離してはくれない。
それどころか握る指に力がこもるのが分かる。
「あのっ、佐伯さ――」
「もし、真緒さんが心を決める前に私と出会っていたら、未来は変わっていたのでしょうか?」
その言葉は静かに、とても静かに佐伯さんの口から放たれた。
「それって……」
「そのままの意味ですよ。真緒さんが心を決める前に私と出会っていれば私を好きになってくたのか……」
「あのっ……それは」
真剣なまなざしが怖くて、佐伯さんの傍から逃げたい衝動にかられ一歩、また一歩、距離を取ろうと後退る。
それに合わせて佐伯さんも私に近づき壁際においやられた。