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ひと夏の恋……そして……
第19章 好きなら奪って
「そこまで言われても何も言わないということは、夏樹さんの真緒さんへの気持ちはそれまでだったんですね。――真緒さん、それが答えですよ。これから先、どんなに待っても夏樹さんが答えを出すことはない。この男はそういう優柔不断なダメな男なんですよ」
佐伯さんは椅子に座ったまま、夏樹の事をこの男と見下した言葉を放った。
さっきの事にしても今の言葉にしても、今までの佐伯さんの印象とかけ離れていて流していた涙も止まった。
「以前もそうだったようですね。和泉さんでしたっけ?真緒さんが好きだったのに和泉さんに寝取られたと聞きましたよ。知らないのは夏樹さんだけで、真緒さんと和泉さんは身体を重ねて愛を育んでいた。笑えますね。手をこまねいているからそんな事になるんですよ。それなのに今回もまた同じことの繰り返し。少しは学習したらどうですか?それとも他の誰かに取られても平気なぐらい好きじゃなかったということですか?」
夏樹は佐伯さんの言葉を聞きながら唇を噛みしめていた。