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ひと夏の恋……そして……
第20章 和解し懐かしむ
「楽しんでいるところ申し訳ないがいいかい?」
店内に響く透き通った声に、三人の笑い声がぴたりと止まった。
声がした方に視線を向けると、相変わらず高めの時計、胸ポケットにはチーフをワンポイントに入れた高そうなスーツを着こなした男性が立っていた。
彼の名前は金平祐也(かねひら ゆうや)。
佐伯さんが引き継ぐ前にリゾート開発の担当だった人。
彼に良いイメージはなく、どちらかと言えば苦手で会いたくはない人だった。
その金平さんは何も言わずにゆっくりと歩いてくる。
今さら何の用だと身構えていると、私ではなく、ましてや夏樹でもなく佐伯さんの前に立ち止まった。
「お前がそんな風に声をあげて笑うなんてな。いつぶりだろうな」
金平さんは佐伯さんの頭に手を置いて優しい表情をみせた。
いつもは厳つくて笑顔を見せない人だっただけに私も夏樹も驚いていた。
「何しに来たんですか」
佐伯さんは頭に乗せられた手を払いのけ、その声は明らかに不機嫌で、先ほどまで一緒に笑っていたのが嘘のような冷たい声だった。