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ひと夏の恋……そして……
第21章 流れる時の中で
「風邪ひくぞ」
真和の遊ぶ姿を見守っていると、肩にコートをかけられ優しい声音で話かけられた。
知ってしまえば、確かに声はそっくりだと思う。
こうやって顔を見ずに声だけ聴けば彼だと勘違いしてしまう。
だけど口調は違う。
佐伯さんでも和泉とは違う俺様的喋り方。
どちらかというと夏樹のしゃべり方に似ている。
「寒いのに子供は元気だな?いつもああなのか?」
そう言葉にする金平さんに視線を向けると、目を細めて真和の事を私同様見守ってくれる。
「子供は風の子ですから」
「とは言っても見守ってるキミはしんどいだろう――それにしても寒いな。夏のうだるような暑さが嘘のようだ」
ブルっと身体を震わせ、両手をポケットに入れて肩を縮こませる金平さんに気が付き、慌てて肩にかけられたコートを取ろうとすればその手を止められた。
「寒いから来ていろ」
「でも、それでは金平さん――」
「その辺にいる弱い男と一緒にするな」
冷たく言い放つ言葉も、今では金平さんのやさしさだと理解している。