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ひと夏の恋……そして……
第22章 それぞれの想い

通りでタクシーを拾い、夏樹は一枚の名刺を取り出して行き先を告げた。
15時を過ぎているからホテルに行くのかと思っていると、タクシーが着いた場所は総合病院だった。
縦にも横にも長い病院に圧倒される。
本土の病院でもここまで大きくはなかった。
「誰かのお見舞い?」
「ああ。俺の親友だ」
広い総合病院の中を夏樹は迷いもせずに歩いている。
それは何度も来たことがあるようで、いつ来たのかと考える。
それに夏樹の親友が誰なのか知らない。
考えてみれば、夏樹の交友関係を聞いた事がなかった。
北病棟の6階にエレベーターが止まり、夏樹の歩いて行く後ろを追いかけると、ある病室に止まった。
一度、私に視線を向けた夏樹は大きく深呼吸してドアをノックする。
「はい」
中からは聞き覚えのある声が聞こえ、その声に夏樹はドアを開けて中に入った。
だけど私は動けず、その間にドアはゆっくりと閉まっていった。
その間に聞こえる声に、手を強く握りしめて立ち尽くすことしかできなかった。

