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ひと夏の恋……そして……
第22章 それぞれの想い

「だからお見舞いには来なくて良いって何度言えば分かるの?わざわざ来てもらうことでもないし、こんな所に来る暇があったら真緒と真和と一緒に居てあげてよ――夏樹?何黙ってるの?言うこと聞かないのなら病院変えるよ」
夏樹は病室に入って何も喋らなかった。
何を思いそこにいるのか、今の私には分からない。
だけど、全てを理解した上でこの場所に私を連れてきたという事だけは分かる。
だけど、夏樹はどこまで理解しているんだろう。
全て理解しているのか、たまたま彼を見つけてしまったのか……
「俺はお前が憎かった。5年前。俺から真緒を奪って置きながら大事なことを言わずに消えた。そのお腹の中には新しい命が芽生え、真緒は頑なに産むと言い張った。誰もが反対する中、夏の間にためたバイト代だけを握りしめて家を出た。その間、あいつがいた場所がどこだったか分かるか?」
夏樹の問いに、彼は答えない。
ただ、私と同じように聞いているしかできないようだった。

