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ひと夏の恋……そして……
第22章 それぞれの想い

「俺たちの通っていた大学の近くにいたんだ。ずっとお前を探してたんだよ。分かるか?あいつはずっとお前を探して待ってたんだ!!」
夏樹が声を荒げ、その声は廊下まで響いていた。
「毎年毎年、夏になればお前が来てくれるのを待ち続けたんだよ。それがどういう事が分かるか?待って待って待ち続けて、やっとお前の事を忘れて前に進もうとした時に――佐伯千夏と名乗って現れやがって……馬鹿にするのもいい加減にしてくれ!」
その言葉に、全てを知った上で私を連れてきたんだと理解した。
「なぁ和泉、なんで佐伯千夏と偽って現れた?なんで今頃現れたんだよ」
夏樹の悲痛な叫びが心に響く。
ただ聞いているだけしかできない私は、いつの間にか金平さんが側に来ていたことも分からなかった。
「とりあえず入ろうか」
金平さんは私の背中に腕を回し、その場から逃げる暇もなく扉は開かれた。
扉が開くと夏樹と佐伯さんの視線が一斉に向く。
驚く佐伯さんに、顔を歪ませる夏樹。

