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ひと夏の恋……そして……
第22章 それぞれの想い

「まっ、真緒さん。どうしてここに?」
動揺したのは一瞬で、いつもの佐伯さんに戻ってほほ笑んでいた。
だけど、夏樹ははっきりと言葉で佐伯さんの正体を私に明かす。
「真緒。あいつは佐伯千春なんじゃない。いず――」
「夏樹!!」
夏樹の声を佐伯さんが大きな声で遮り慌てて否定する。
「変な事を言わないでください。私は佐伯千春ですよ。和泉さんじゃないと、何回言えば分かってもらえるんですか」
佐伯さんが、どんなに否定的な言葉を口にしても遅い気がする。
先ほどの口調からしても、夏樹を呼び捨てにすることにしても、彼は佐伯さんではなく……
「……和泉」
私の言葉に佐伯さん……和泉は表情を強張らせ引きつらせながらも、まだ取り繕うとする。
「真緒さんも……何を言っているんですか。私が和泉さんじゃないと分かってもらっていたはずですよ。夏樹さんが変な事を言うから真緒さんまで勘違いしたじゃないですか」
はははっと笑いながら説明されても、私も夏樹も同じように笑えなかった。

