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ひと夏の恋……そして……
第22章 それぞれの想い

「和泉……夏樹はああいったけど、私の気持ちは決まってるの。佐伯さんが和泉だと分かっても変わらない」

「分かってるよ。真緒の気持ちは散々聞いたからね。きっと僕が和泉だと分かっても気持ちは変わらないだろうって……だから和泉として真緒には会わないって夏樹には言ってたのに、まさか真緒を連れてくるとは思わなかったよ」

苦笑いする和泉に、私をここに連れてきたのは夏樹の独断だと分かった。
それに、和泉が今更私に会いたいと言うはずもない。

「夏樹も馬鹿だよね。僕の事なんて放っといて結婚すればいいのに律義に僕の正体をばらすなんてね」

「そこが夏樹の良いところなんじゃない?」

「そうだね。5年前も僕たちを憎んでいるはずなのに真緒を港まで連れてきてくれた。今日だって……真緒が僕の手を取る可能性もあるのに会わせてくれた。お人よしにも程があるよね」

「本当だよね」

そう言って、お互いに心から笑うことができた。
笑う顔は5年前と変わらない。
あの頃より少し大人びた、和泉の素敵な笑顔だった。


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