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ひと夏の恋……そして……
第3章 自由になる為に
何度か私の名前を呼ばれても返事も出来ない私の髪の毛に夏樹の手が触れた。
髪の毛を弄りながら、そして、ポンポンと頭を撫でてその手は離れて行った。
それが寂しいと思えた。
もっと触れていてほしいと思うのはどうしてだろうかと考えていると車は止まった。

「体調悪いなら帰るか?」

喋らなくなった私に夏樹は気を遣う。
体調が悪いわけじゃないから首を横に振り笑顔を向けた。

「だったらいいけど……この先に見晴らしが良い展望台があるんだけど行けるか?」

夏樹の言葉に頷いて車から降り、人一人しか歩けない道を10分程歩いた。
その間に会話なんてない。
いつもだったら馬鹿話してじゃれあえるのに今日はできなかった。
理由は分かってる。
私が、夏樹を意識し始めたから。
さっきまでは何とも思っていなかったのに「かわいい」の一言に、触れられた手に、私は夏樹を意識してしまった。



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