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ひと夏の恋……そして……
第1章 進みだした時間

「そういえばさ、この辺りにリゾート開発の話があるの知ってる?」

食べるのが一段落した瞬間を見計らって夏樹が口を開いた。

「うん、この店も区画に入ってるみたい」

「やっぱりそうか。俺の店にもアクションあったから、もしかしたらと思ったけど。」

夏樹は何を思っているのか、少し複雑な顔をしていた。


――リゾート開発。


この島は何の産業もなく、人口千人に満たない小さな島。
白い砂浜とエメラルドグリーンの海が唯一の観光スポットだった。
CMやドラマなどでも使われ、数年前には本土と繋ぐ橋が架かり観光客は一気に増えた。
それでも高齢化は進み、減退の道を進んでいる。
そんな中でのリゾート開発の話はありがたいとは思う。

「俺は、リゾート開発は反対じゃない。じーちゃんやばーちゃんのことを考えるとこんな小さな島より本土の方が良いに決まってる。大きな病院もあるしな」

夏樹は私と同じ思いを口にする。
立ち退き料が入れば苦労せずに老後が過ごせる。
それに、お店を立ち退けば、その後のリゾート内での職も優先的に斡旋してくれると中々に良い交渉内容だった。
だけど私は、この店を失いたくない。
この店で私は……


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