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ひと夏の恋……そして……
第3章 自由になる為に
「ねぇ……まだ?」
「もう少しだから頑張って」
声をかければ、優しい声音が耳に届く。
その声は私の心を温かくしてくれる。
それは、初めて会った時から変わることはない。
「真緒……目を開けて」
夏樹の引く手が止まったと思ったら開けて良いという。
私は何があるのかドキドキしながら瞳を開けた。
「っ……わぁ……」
その風景を見た瞬間、言葉なんてでてこなかった。
ただただその風景に見入って、夏樹が傍にいることさえ忘れるほどにきれいで惹きこまれた。
目下に広がるのは太陽に照らされてキラキラと光る海。
太陽が傾きかけているせいか、少し赤く輝いていた。
「気に入った?」
隣から声がかかり、やっと夏樹がいることに気がついた。
夏樹を見上げて、うんうんと首を振ると、夏樹は満足そうに微笑んでいた。
その笑顔は、今まで見たどんな笑顔より輝いて見えた。
目を逸らすことも出来ずにいると、夏樹の笑顔が消え真剣な眼差しが私に向いた。
今までも見たことのない真剣な男の表情だった。