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ひと夏の恋……そして……
第4章 未来への第一歩
久しぶりに入る夏樹の部屋はあの当時と何も変わっていなかった。
変わってしまったのは私と夏樹の関係だけ。
その関係もまた変わろうとしていた。

「適当に座ってろ」

夏樹の言葉に甘えてベッドに腰を下ろして扇風機を付けた。
夏樹は引き出しの中からWirbel(ヴィアベル)のCDを取り出してセットする。
そして、そこから流れ出したWirbel(ヴィアベル)の歌声に、一瞬にして当時の世界へと引きずり込まれる。
先ほどより鮮明に、あの暑かった夏を思い出して涙を流した。

「音楽って不思議だよな。その曲を聴いただけで昔を思い出すんだからさ」

私の涙の理由を知っている夏樹は、私の横に座って肩を引き寄せて抱きしめてくれる。
その肩に頭を預けて寄り添って静かに涙を流し続けた。

「良い事も悪い事も思い出すって言ったけどさ。良い事の方が多いんだよな。車で出かけるたびにこの曲を聴いてさ、真緒に勉強を教える時も聴いてた。浜辺を散歩しながら歌ったし、真緒と初めてキスをした直前まで聞いてたよな」

夏樹の言葉で思い出すのは良い思い出ばかりだった。


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