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ひと夏の恋……そして……
第1章 進みだした時間
「私は……」
そう言って言葉に詰まる。
夏樹の言い分が正しいと分かっていても簡単に過去を切り捨てることなんてできなかった。
だけど……真剣に向けられる視線は忘れていた何かを思い出させてくれるように、私の心を震わせた。
「俺の気持ち、気付いているよな」
今までにない程の真剣な表情と真剣な言葉にゴクリと喉がなった。
「俺は、あいつが来る前からずっと真緒が好きだった……」
夏樹の指が頬をやさしく撫で始めた。
「俺はお前が欲しい……お前のすべてが欲しいんだ」
いつも優しいだけの夏樹が、いつもと違う表情で私が欲しいと求めてくる。
初めて見る男の顔に困惑しながら……いや……違う。
私は昔、この表情を何度も見ている。
その表情に大人の色気を感じて恋をしていた頃もあった。
「私は……」
またしても言葉を詰まらせた。
何も言葉にしない私の唇を夏樹の指がなぞる。
それだけで私の身体は素直に反応する。
「なぁ、俺は真緒が好きなんだ……それはずっと変わらなかった。あの時のまま、俺は真緒が好きだ」