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爪先からムスク、指先からフィトンチッド
第16章 2 宮様と王子
――真菜は芳香と別れてスーパーに立ち寄った。
恋人の鳥居和也は隣同士に住んでいるので、結婚を機に二人でアパートを借りることにしている。
今はお互いの家を行き来して、和也の母親と一緒に料理を作ったり、また真菜の家に和也がやってきて夕飯を食べたりする。今日は真菜の家で彼女が夕飯を作る。

 二人が結婚すると言い始めたとき双方の両親は非常に驚いたが、もともと仲の良い隣人であったため、すぐに満場一致、万歳という状況になった。
 スムーズな結婚なので楽に事を運べるのだが一つ問題なのがセックスに関してだ。
真菜と和也が家族同然なので二人で部屋に居ても、お互いの家族が遠慮なく平気で出入りしてくる。


「はやく二人で暮らしたいなあ」
家族が目の前にいない隙に、真菜は和也をこっそりいじめる。昨日は和也のペニスの根元に輪ゴムをつけ、人がいないときに上から擦ってやった。
 和也は目をウルウルさせ、勃起を必死で隠していた。
そのまま時間があればわずかな時間で真菜と和也は繋がったが、昨日はそんな時間がなく和也を置いて、真菜は自宅へと戻った。

「あの後自分でしたのか聞いてやろう」
 くくっと思い出し笑いをしてしまい、人目をハッと気にして適当な野菜をかごに入れる。

 二人きりになったらしたいことはいっぱいある。
「目隠しいいなー。スパンキングははずせないし」
 新居探しに一番骨を折ったのが防音だ。鉄筋コンクリート造りの角部屋を選び、ペット可のアパートを選んだ。
自分たちが静かに暮らしたいのではない。音がよりごまかされやすい環境を選んでいる。

 真菜が「バイブの振動音って案外響くみたいだものね」と和也に告げると、彼は目を泳がせながら「ど、どっちが使うんだよぉ」と大きな身体をもじもじさせた。
「ああー、楽しみだなー」
 ご機嫌で買い物を終え、真菜は精力のつくメニューを考えながら帰宅した。
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