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爪先からムスク、指先からフィトンチッド
第17章 3 羅袖 香を動すも 香已まず
 カフェ『ミンテ』は賑やかでほぼ満席だ。
「奥に、席とってありますから」
「ありがとう」

 二人が店内を歩くと、ほぼすべての女性客が騒めき視線を送る。
「あ、あれミント王子じゃない?」
「ほんとだー、隣の人だれ?かっこいー」
「芸能人じゃないの? あの二人って」

 涼介は教育番組ではあるがテレビ出演したこともあるので、知っているものは知っているようだ。
艶やかなナラの木の椅子に腰かける。

「ミント王子はやはり人気者だな」
「いやあ、兵部さんも女性の注目集めてるじゃないですかあ」
「しかし、意外な内装だな。もっとスタイリッシュな雰囲気だと思っていた」
「俺、こういうカントリーちっくなほうが好きなんですよ。寒々しいのやだし」
「なるほど」

 香り高いミントアイスティーを飲んでリフレッシュしていると、また店内が騒めき始める。
「ん? なんだろ。有名人でも来たのかな」
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