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爪先からムスク、指先からフィトンチッド
第21章 涼介のミントガーデン
――施設では衣服のおさがりは多く困らなかったが、靴は不足していた。運動量の多い子供たちの履き古す靴は、洋服のおさがりの並みでなく汚れ、破れ、履けるものではない。新品の靴を買ってもらうことがあることにはあるがサイズが上がればすぐ買ってもらえるわけでもない。
 環は中学入学のために買ってもらった黒の革靴を大事に履いた。サイズが上がるとボロボロの靴に変わってしまうのが嫌で、きつくても我慢して履き続けていた。

「まるで、纏足じゃないか」
「そうね、そのせいであんまりスポーツも得意じゃなかったのよね」
「しかし、スーパーモデルともなると違うね。自分は平凡だなあと思うよ」

「あなたって不思議ね。私の話に同情しないのね」
「うーん。可哀想な目に合っている最中に出会っていたらそう思うかもしれないね。でも、もうそれを乗り越えて目の前にいる君が素敵だと思うだけだ」
「ありがとう。そういわれると楽だわ」
「ははっ、まあ、誰だって辛い思いも苦しい思いもして生きてきてるんだしね」

「あなたの話も聞かせて。どうしてこの世界に? ミントがずっと好きなの?」
「そうだなあ。ミントはうちの母が庭に植えていたんだ。最初からそれが好きだったわけじゃないんだが」
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