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爪先からムスク、指先からフィトンチッド
第23章 第四部 小さな狭い部屋で
 同じような時期に清水涼介と環の結婚式が行われた。

薫樹も招待されて参加している。

涼介と環の結婚式は、環の育った施設の近くの総合運動場を貸し切って行われたかなり規模の大きいものだ。



 だだっ広い広場にチャペルを作り、何席ものテーブルが運ばれ式は行われる。

環の装いはシンプルなAラインのドレスで丈も短めだ。彼女のスタイルの良さがよく引き立ちしかも飾りっ気がないことが凛とした美しさを強調している。彼女を見ると息をすることを忘れて見入るだろう。



 招待客は著名人はもちろんのこと、彼女の育った施設の職員、子供たちも呼ばれている。環はこの施設の子供たちにとってスターなのだ。おずおずと環を畏怖するように子供たちは見上げる。

環は低くしゃがみ「いっぱい食べてね」と笑顔で微笑んだ。

涼介はその様子を微笑ましく見守り、王子らしくエスコートし笑顔を振りまく。



「兵部さん、ようこそ」

「清水君、いい式だね。環も幸せそうだ」

「ありがとうございます。兵部さんの式、呼んでくださいよ?」

「ああ、もちろんだ」



 明るく社交に勤しむ環を見ながら薫樹はふむと頷き「さすが人慣れしているな」と感心した。

涼介も同意する。

「まあTAMAKIはみんなのTAMAKIですからねえ」

「確かに」

「でも環は俺のものですからね」

「なるほど。君は案外独占欲が強いんだな」

「うーん。もともとそうじゃなかったと思いますけどね」

 環も印象が柔らかく優しく変わったが、涼介もまた少しずつ変わりつつあるのだろう。



「これからはミント王かな」

「はははっ。いつか皇帝にまでのぼりつめますよ。じゃ、楽しんでってください」

 ウィンクをして涼介はまた社交の渦に入っていく。二人を眩しく見つめながら薫樹は芳香の事を想う。そしてこの式が終わったら会いに行こうと考えていた。 
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