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爪先からムスク、指先からフィトンチッド
第23章 第四部 小さな狭い部屋で
夕方、チャイムが鳴り、出ると薫樹が立っていた。
「え、し、薫樹さん、どうしてここに?」
芳香のアパートの住所を教えてはいたが、小さく狭い部屋なので薫樹を招いたことはなかった。
「お邪魔していいかな」
きちんとスーツを着て、光沢のある綺麗な紙袋を下げている。
「えっと、狭いですけど、どうぞ」
断る理由が見当たらず芳香は薫樹を部屋に招き入れるとふわっと部屋中が森林浴のような香りに包まれる。
「ふぁあ、いい香り……」
一瞬、ぼんやりとしたが薫樹を促し、藍染の座布団を出して座らせる。
「いい部屋だな」
「え、そうですか?」
「うん、こざっぱりとして」
「狭くて物がないだけなんですけどね……」
1DKのアパートは必要最小限のものしかなかったが、こまめに掃除され、清潔感があり、生成りと藍色で構成された部屋は薫樹にとって居心地がよいらしい。
「清水君と環の結婚式はなかなかよかったよ」
「へえ、社交界みたいなんでしょうねえ」
芳香と薫樹は二組の結婚式の感想をそれぞれ言い合った。夢見るようなうっとりする芳香の表情を見ると薫樹はなんだか身体が熱くなるのを感じ、ネクタイをほどいてジャケットを脱いだ。
「え、し、薫樹さん、どうしてここに?」
芳香のアパートの住所を教えてはいたが、小さく狭い部屋なので薫樹を招いたことはなかった。
「お邪魔していいかな」
きちんとスーツを着て、光沢のある綺麗な紙袋を下げている。
「えっと、狭いですけど、どうぞ」
断る理由が見当たらず芳香は薫樹を部屋に招き入れるとふわっと部屋中が森林浴のような香りに包まれる。
「ふぁあ、いい香り……」
一瞬、ぼんやりとしたが薫樹を促し、藍染の座布団を出して座らせる。
「いい部屋だな」
「え、そうですか?」
「うん、こざっぱりとして」
「狭くて物がないだけなんですけどね……」
1DKのアパートは必要最小限のものしかなかったが、こまめに掃除され、清潔感があり、生成りと藍色で構成された部屋は薫樹にとって居心地がよいらしい。
「清水君と環の結婚式はなかなかよかったよ」
「へえ、社交界みたいなんでしょうねえ」
芳香と薫樹は二組の結婚式の感想をそれぞれ言い合った。夢見るようなうっとりする芳香の表情を見ると薫樹はなんだか身体が熱くなるのを感じ、ネクタイをほどいてジャケットを脱いだ。