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爪先からムスク、指先からフィトンチッド
第7章 7 再開
お気に入りのショートブーツを脱いでも、匂いを気にしなくていいことに芳香は微笑んで部屋に上がる。
「あ、あのこれ、ショートケーキです。どうぞ」
「ん。ありがとう。紅茶でも淹れるよ」
香りの高い綺麗な水色の紅茶とガトーショコラを並べると薫樹は「じゃあ、説明してもらおうか」と言い出した。
「えっと、説明というのは?」
「どうして僕の前から消えたのかってことだよ。別れ話一つせずいきなりいなくなるなんて」
「……?」
「居所は君と同じ部署の立花さんに聞いて分かったんだ」
芳香には薫樹が何を話しているのか今一つ理解が出来ない。
「あ、あの。どうして私の居所を気にするんですか?」
「恋人なんだから当たり前だろう?」
「ええっ?」
芳香は絶句する。(いつの間に恋人になったんだっけ……?)
薫樹の顔色がさっと青ざめた。芳香には出会ってから今までを振り返ってみたが恋人関係に到ったことの経緯が記憶にない。
「スミマセン。ほんとに。いつから私たちお付き合いをしているんでしょうか?」
「僕が付き合ってほしいと言ったら君は『はい』と返事をくれたから」
「えっ! えっと……まさか……」
「僕の誤解だったのか。まあ確かに君に愛撫をしてもすぐ寝てしまうし、おかしいとは思っていたんだ」
「ええっ!? 愛撫っ??」
二人の感覚にはかなり相違があるようだ。芳香が困惑し固まっていると薫樹は大きく息をはき出し、目を閉じ眼鏡をかけ直すと話し始めた。
「もう一度言うけど僕はちゃんと告白をして同意を得たつもりだったんだ。研究が終わった後、君の爪先にキスをして愛撫をすると喜んで気持ちいいと言ってたし。手料理だって僕のために持ってきてくれて……」
ため息をつき薫樹は力なく口をつぐむ。
そういわれてみると確かに付き合って欲しいと言われた記憶があるがそれは実験に対してだと思っていた。足をマッサージされる感覚に気持ち良さを感じていたし、手料理も温かいものを食べさせたいと思い保温カップに入れて野菜スープを持参しテラスで食べたことが一度ある。
「あ、あのこれ、ショートケーキです。どうぞ」
「ん。ありがとう。紅茶でも淹れるよ」
香りの高い綺麗な水色の紅茶とガトーショコラを並べると薫樹は「じゃあ、説明してもらおうか」と言い出した。
「えっと、説明というのは?」
「どうして僕の前から消えたのかってことだよ。別れ話一つせずいきなりいなくなるなんて」
「……?」
「居所は君と同じ部署の立花さんに聞いて分かったんだ」
芳香には薫樹が何を話しているのか今一つ理解が出来ない。
「あ、あの。どうして私の居所を気にするんですか?」
「恋人なんだから当たり前だろう?」
「ええっ?」
芳香は絶句する。(いつの間に恋人になったんだっけ……?)
薫樹の顔色がさっと青ざめた。芳香には出会ってから今までを振り返ってみたが恋人関係に到ったことの経緯が記憶にない。
「スミマセン。ほんとに。いつから私たちお付き合いをしているんでしょうか?」
「僕が付き合ってほしいと言ったら君は『はい』と返事をくれたから」
「えっ! えっと……まさか……」
「僕の誤解だったのか。まあ確かに君に愛撫をしてもすぐ寝てしまうし、おかしいとは思っていたんだ」
「ええっ!? 愛撫っ??」
二人の感覚にはかなり相違があるようだ。芳香が困惑し固まっていると薫樹は大きく息をはき出し、目を閉じ眼鏡をかけ直すと話し始めた。
「もう一度言うけど僕はちゃんと告白をして同意を得たつもりだったんだ。研究が終わった後、君の爪先にキスをして愛撫をすると喜んで気持ちいいと言ってたし。手料理だって僕のために持ってきてくれて……」
ため息をつき薫樹は力なく口をつぐむ。
そういわれてみると確かに付き合って欲しいと言われた記憶があるがそれは実験に対してだと思っていた。足をマッサージされる感覚に気持ち良さを感じていたし、手料理も温かいものを食べさせたいと思い保温カップに入れて野菜スープを持参しテラスで食べたことが一度ある。