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祭の夜
第3章 女の四十は辛い
「ここにお座り」
戻ってきた淑恵は顔付きが変わっていた。気圧された義雄は言われるとおりに布団の脇に正座すると、「もうお父ちゃんはうちを女と見てくれへんのよ」と妙なことを言いだした。
「おばさん、きれいだけど」
義雄は当たり障りのないことを答えたが、「そないなこと言うてくれるんは義雄ちゃんだけや」と、淑恵は布団の縁を掴んだり離したり、落ち着きがなかった。
「義雄ちゃんはまだ分らんやけど、女の四十は辛いいん」
三十後家は通せても四十後家は通せん
義雄がそんな言葉を知る由もない。淑恵は後家ではないが、四十一歳、眉間に皺を寄せにじり寄るその姿は言葉通り、すがるように義雄の浴衣の裾を掴んでいた。
「義雄ちゃん……」
「ど、どうしたの」
妙な気配を感じた義雄は後退りしたが、淑恵の手が浴衣の帯にかかっていた。
「しとうて、しとうて、もうあかんのよ」とにじり寄った彼女は、突然、「堪忍よ」と義雄の胸に抱きついてきた。
「あ、お、おばさん」と義雄は戸惑っていたが、体は正直。淑恵からほのかに漂う香水の匂い、そして感じる体温に、下腹部は硬くなっていた。
「あ、いや、これは……」
「ええんよ、ええんよ、そないなこと気にせんと。うちはうれしいんよ。お礼に、ええことしてあげる。かて、お父ちゃんには内緒やで」
そう言うと、淑恵は義雄の浴衣の襟を掴んで、唇を重ねてきた。
チュッ……やわらかい。だが、味わう間もなく、直ぐに離した。義雄は頭が真っ白になってしまった。
「ふふ、どないなや?」
「あ、あの……」
妖しく微笑む淑恵は角度を変え、唇を開いて義雄の唇を吸った。
チュッ、チュッチュッ、クチュッ、クチュクチュッ……
義雄はもう何が何だか分らない。ただ、抱きつかれ、押し倒されるままに布団に転がった。