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独り暮らし女性連続失踪事件
第4章 救出への動き
「昨晩、君が一緒に居た男、『安田(やすだ)哲也(てつや)』って言ってね、空手の有望な選手だったけど、道をそれてしまい、恐喝や詐欺、暴力事件と何度も警察に捕まった男だよ。そんなとても危ない男と君が『いとこ』だなんて、どうしてなのかな?」と話掛けたが、誠は何も反応しない。
「坂田課長は先生の知り合いだから、心配しなくていいんだよ」と根本先生も声を掛けたが、やはり下を向いたまま体を硬くして何も答えない。
「安田に何か言われたのか?殴られたりはしていないよな?少しでもいいから話してくれないか」と坂田課長がもう一度話し掛けたが、やはり変わらない。坂田課長は更に追い込んで聞き出したかったが、根本先生が“今はダメですね、今日はこれくらいで”と目で制したので、それ以上の事情聴取は止めにした。
「分った。無理に話さなくてもいいから、教室に戻っていいよ。授業中に呼び出して悪かったな」
根本先生は誠の肩を叩いてねぎらったが、誠は何も言わずに指導室を出て行った。
その後ろ姿を見ながら坂田課長は「彼は相当に脅かされていますね。安田哲也は要注意人物です。大事にならないよう、緊密に連絡を取り合いましょう」と言った。顔は先程とは変わって厳しいものに変わっていた。
「よろしくお願いします。あいつを助けて下さい」
「分ってますよ。あの子は悪い子じゃない。間違った道に進ませちゃいけない。思いは同じです、では」
坂田課長を見送った根本先生は誠が陥ってしまった闇の深さを改めて感じていた。
大沢、必ず助け出してやるからな。それまでは出来るだけ家から出るな
窓から差し込む日差しが眩しい。根本先生は何とか光明を見出したいと願いながら、校長室に戻って行った。