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独り暮らし女性連続失踪事件
第4章 救出への動き
「分りました。しかし、大沢君を一人で警察の方と会わすのは…どうでしょう、根本先生が立ち会うというのは。彼は根本先生のことを慕っておりますので、その方が話し易いと思います」
「その方がいいでしょう。私もそう思います」
校長先生の考えに沿い、根本先生は坂田課長と指導室に移り、誠をそこに呼びだした。
「大沢、授業中にすまないな」と根本先生が声を掛けたが、誠の顔は酷いものだった。目は真っ赤、そして、やつれている。あれから何かがあったことは明白だ。
誠はチラチラと根本先生や坂田課長の方を見るが、「裏切ると背中に刺青入れちまうからな」という哲也の声が頭の中で鳴り響き、「つらいことは一人で悩まなくていいんだよ」と先生が掛けてくれた言葉も耳に入らない。
昨晩、根本先生の家にいた時と同じ、「僕は何も悪いことはしていないけど」とだけ言って、黙り込んでしまった。
このままでは昨晩と同じ、何も聞き出せない。「よろしいですか?」と坂田課長は根本先生に断った上で、「大沢君、昨夜はどこにいたのかな?」と優しく話し掛けたが、誠はちょっと顔を上げただけで、直ぐに下を向いてしまった。警察官に心を覗かれないようにと誠は両手を膝の上でじっと握りしめている。
しかし、ここで止めたら、誠を傷つけずに救い出すことはますます困難になってしまう。