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独り暮らし女性連続失踪事件
第6章 奪還
副署長の言った通り、田村は吉野への挑発を続ける。
<おやおや、何を体験させてくれるのかね?嬉しいね。
背中の紋々の他に勲章が出来るな>
<田村、泣くなよ。犬にお前のかまを掘らせるんだよ>
「犬がそんなことをするのか?」と若手刑事が口を挟むと、「黙って聞いてろ」と、今度は署長が一喝した。
<痛いのか?>
<お前の部下は尻の穴から血を流して、泣いたよ>
<それは嫌だな。吉野さん、何か薬でもくれよ>
<贅沢な奴だな。おい、シャブでも打っちまえ>
<シャブかよ…・新しいのはないのかよ?>
<うるせえな、そうだな新しいのか…おい、あれはあるか?>
<ボス、聡子さんがいないと鍵がないので…>
<なんだよ、〝あれ〟って?MDMAか?>
<何だ、勘がいいな、そうだよMDMAだよ>
その言葉を引き出した瞬間、「よし、ハイエナ、そこだ、いけ!」、「そうだ、よし、いいぞ!」と署長と副署長が同時に叫んだ。
<女に飲ませたんだって。吉野さん、だめだよ死なせちゃ>
<俺が殺したなんて、変なこというなよ。
風邪だ、頭が痛てえっていうから、それら薬と一緒に気持ちが良くなるからって
MDMAも飲ませてやっただけだぜ。
殺したなんて人聞きが悪いことは言うなよ>
「よし、いいぞ、ハイエナ。副署長、向こうの警察に直ぐに連絡して下さい」
「了解です。監禁、暴行、覚せい剤取締法違反、それに殺人だ!
悪党たちを一斉に逮捕しろ」
普段は〝念仏さん〟と陰口をたたかれている署長が全く別人のように続けざまに指示を出す。
「大下君、獣医の加藤を呼び出せ。素人だと思って軽く考えるな。片山君、安田の身柄を押さえろ。大沢君を脅していたのはあいつだ。職質で聞き逃した挽回のチャンスだ。今度はぬかるな。
坂田課長、週刊スクープに連絡して、もうインターネットは止めさせろ。ここからは、プライバシー保護が必要だ。そして、マスコミ対策にあたってくれ」
田村の「俺のやり方」が事件を一気に動かした。