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アンケート御礼小話詰め合わせ(_ _)
第3章 近頃都で流行るもの(スグリ・サクナ)
*
「ただいま」
「お帰りなさい、サクナ!!」
居間で帰宅を出迎えたスグリは、サクナに向かって零れんばかりの弾んだ笑顔を向けました。
「今日は、何か変わった事は無かったか?」
「無いわ!今日も楽しい一日だったわ……あ。」
「『あ』?どうかしたか?」
柔らかい体を緩く抱いて薄茶の髪を撫で、口づけを落としていたサクナの耳に、スグリが口にした言葉尻が引っ掛かりました。
「ううん、別に、何にも?……今日、ロゼが遊びに来たの」
「ローゼルか」
式を控えたローゼルは、何かと忙しくしています。それでも時々スグリとお茶を飲みに来てくれるのは、遠い地に来て今はバンシルとも離れてしまっているスグリが淋しく感じ無い様になのでしょう。 サクナはローゼルのさり気ない気遣いを、改めて有り難く思いました。
「元気だったか、ローゼルは」
「ええ。今日は、渡したい物も有ったし……あ」
「……『あ』?」
「ううん……別に、何でも?……きゃ!」
「あ。」だの「あ」だのといかにもうっかりした言葉が口から零れ落ちるのをじーっと見詰めて聞いていたサクナは、不自然に目を逸らすスグリを無言で抱き上げました。
「ちょっとっ、なにっ」
「暴れんな。落ちるぞ……おい」
「はい」
傍らに控えていたクロウは、目の前で繰り広げられている主夫妻の茶番劇など有りもしないかの様に答えました。
「奥様ぁ大層お疲れだそうだ。もう寝かせちまうから、夕食は要らねえ」
「ちょっとっ!?」
「畏まりました」
スグリには、自分が大層疲れた憶えなどこれっぽっちも有りません。反論しようとしましたが、クロウに淡々と遮られ、抱き上げられたままでさっさと居間から離れてしまいました。
「なによぉっ!急に、どうし」
落ちない程度にじたばた暴れてサクナを見上げると、目の奥以外のあらゆる部分でにっこり優しげに微笑まれました。