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8月のヒメゴト ~僕と桃香の7日間~
第5章 5日目
「そしたらね…急に痛みがなくなって、体がスウッと浮いた感じがして…気がついたら元の町に…耕平お兄ちゃんがいる町に立ってたの」
「それって…」
ももちゃんは、うなずいた。
「わたしにもわかったよ。死んじゃったんだって」

じゃあ、今僕の横にいる少女は…幽霊…ということか?でも彼女の体は、紛れもなく生身の、完全な肉体だ。

「それからのわたしは、どこでも行きたい所に行けたよ。ずっと耕平お兄ちゃんのそばにいられた。でも、ただ見てるだけで何もできないの。誰もわたしに気づいてくれないし」

それはちょうど、ひとりで監禁された部屋の中で、テレビだけを見て過ごしているようなものだろうか。
テレビに映る人物は見える、声も聞こえる。でもその人と会話はできないし、触れることも叶わない。単なる傍観者だ。
そんなふうに、桃香ちゃんは僕を20年間見続けていた。

「お兄ちゃんは、どんどん大人になっていくけど、わたしはずっと12歳のまま」
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