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星逢いの灯台守
第4章 上海ローズ
…夢を見ているのではないか…。
宮緒は子どものように頰を抓りたくなった。

由貴子はしなやかに大階段を上がり、宮緒が立ち竦む踊り場まで辿り着く。

「…由貴子…さん…?」
「…何てお貌をなさっているの?
まるで幽霊を見ているみたいだわ」
その優美で典雅な美貌に悪戯めいた微笑みを浮かべる。
けれどそれは、とても温かい色を秘めていた。

「…幽霊でも構わない。
貴女に逢えたのなら…」
震える声で絞り出すように告げ、その白い手を引き寄せる。
…宮緒の鼻先に掠めたのは、あの夢にまで見た白檀の薫りだ。
折れそうに華奢な身体を抱き竦め、その艶やかな黒髪に貌を埋める。
…夢ではない証拠に、由貴子の身体は温かく、その薫りは切ないほどに馨しい。

「…皆様がご覧になっているわ…。
貴方の職場なのに」
宮緒の胸の中で恥じらう由貴子の声もまた小さく震えていた。
「構わない。
貴女をこの腕に抱きしめる方が大切だ…。
…もう…二度と離したくないから…!」
「…宮緒さ…」

…その語尾は宮緒の熱い口づけに絡め取られ、二人の甘い吐息の中に柔らかく消えていったのだ。
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