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星逢いの灯台守
第1章 名も知らぬ薔薇
「わあ…!タグホイヤーのカレラじゃないか!
…これ、二十万はするぜ?
すごいな、宮緒。誰がくれたんだ?」
同室の生徒が肩先から時計を覗き込み興奮した歓声を上げた。
「…片…兄さんが…入学祝いに…て…」
…そんなに高価な時計なのか…!
宮緒は驚き、慌てる。
…『時計、持っていないだろう?
親父は細かいことに無頓着だからな』
そう言って、別れ際に無造作に渡されたモノトーンのシックな包装…。
箱に印字された横文字は読めたけれど、時計のブランドなど無知なので分からなかった。
高価な時計など見たことも聞いたこともなかったから、片岡にもらった時、ただ単純に喜び眼を輝かせて礼を言った。
「ありがとうございます!大切にします!」
…中学生相手の祝いの品だ。
せいぜい1万円前後の時計かと思っていたのだ…。
…どうしよう…。
宮緒は登録したばかりの片岡のアドレスを呼び出し、メールを打つ。
「先ほどはありがとうございました。
…頂いた時計、すごく高価なものだと聞きました。
こんなに高価なものは頂けません。
お気持ちだけ頂きます」
…気を悪くしませんように…。
祈るような気持ちで、メールを送信した。
しばらくして返信があった。
「弟が出来た記念だ。
単なる俺の自己満足だから、気にしないでくれ」
あっさりとした返信に、肩透かしを食らい小さく笑う。
…兄さん…かっこいいな…。
兄に対する憧憬が更に昂まる。
「…ありがとうございます。
一生、大切にします」
返信を送り、時計を眺めた。
きらきら光る瑠璃色の文字盤…。
宝石のように美しい時計だった。
…『君は自由に生きて行っていいんだ』
その夜、宮緒は寄宿舎のベッドに横たわりながら、兄の言葉を擦り切れるまで頭の中で反芻し続けた。
…これ、二十万はするぜ?
すごいな、宮緒。誰がくれたんだ?」
同室の生徒が肩先から時計を覗き込み興奮した歓声を上げた。
「…片…兄さんが…入学祝いに…て…」
…そんなに高価な時計なのか…!
宮緒は驚き、慌てる。
…『時計、持っていないだろう?
親父は細かいことに無頓着だからな』
そう言って、別れ際に無造作に渡されたモノトーンのシックな包装…。
箱に印字された横文字は読めたけれど、時計のブランドなど無知なので分からなかった。
高価な時計など見たことも聞いたこともなかったから、片岡にもらった時、ただ単純に喜び眼を輝かせて礼を言った。
「ありがとうございます!大切にします!」
…中学生相手の祝いの品だ。
せいぜい1万円前後の時計かと思っていたのだ…。
…どうしよう…。
宮緒は登録したばかりの片岡のアドレスを呼び出し、メールを打つ。
「先ほどはありがとうございました。
…頂いた時計、すごく高価なものだと聞きました。
こんなに高価なものは頂けません。
お気持ちだけ頂きます」
…気を悪くしませんように…。
祈るような気持ちで、メールを送信した。
しばらくして返信があった。
「弟が出来た記念だ。
単なる俺の自己満足だから、気にしないでくれ」
あっさりとした返信に、肩透かしを食らい小さく笑う。
…兄さん…かっこいいな…。
兄に対する憧憬が更に昂まる。
「…ありがとうございます。
一生、大切にします」
返信を送り、時計を眺めた。
きらきら光る瑠璃色の文字盤…。
宝石のように美しい時計だった。
…『君は自由に生きて行っていいんだ』
その夜、宮緒は寄宿舎のベッドに横たわりながら、兄の言葉を擦り切れるまで頭の中で反芻し続けた。