この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
星逢いの灯台守
第4章 上海ローズ
「…ええ、中国茶…。
…例えばこれは花茶という工芸茶なのだけれど…」
由貴子がウェイターから運ばれたばかりの薄手の白磁の蓋碗の蓋を白く美しい手で持ち上げた。
馥郁たる緑茶に清廉なジャスミンの香りが加わって卓上が芳醇な空気に包まれる。
「茉莉梅花というお茶なの。
…緑茶を丸く束ねてそこにジャスミン茶で香り付けしてあるのね。
お湯を注した時の形が梅の花に似ているのでそう呼ばれているそうなの。
…で、段々と花が咲くようにお茶が開いてゆくの」
宮緒も釣られて覗き込む。
「…へえ…。本当だ…。
僕はあまりお茶には関心がなくて、上海に来ても烏龍茶くらいしか飲んだことはなかったな」

勧められるがままに一口飲む。
「…美味しい…」
甘く華やかな香りと優しい緑茶のバランスが絶妙だ。
由貴子は新しく梅花をいくつか蓋碗に入れ、美しい所作で茶壺からお湯を注ぐ。
「…中国茶には色々な種類があるわ。
緑茶、白茶、黄茶、青茶、黒茶、紅茶…それから花茶、そして芸術茶とも呼ばれる工芸茶ね。こちらはまだ歴史が浅いの」
「そんなに種類があるの…。知らなかった」
由貴子は充分に蒸らし、蓋を取ると眼で楽しみながらお茶を飲んだ。
…その美しくしなやかな仕草に思わず目を奪われる。

「…私、ずっと中国茶について勉強したいと思っていたの。
今、日本の茶道は若いひとには敷居が高いらしくてなかなか関心を持ってもらえないの。
お稽古に来られる方は年配の方が殆どでね。
もっと日本の茶道を気軽に学んでもらえないか…て考えていて…。
それなら日本のお茶に限らず、中国茶や紅茶についても学べるお教室があったらいいんじゃないか…て思いついたの。
それで、思い切って上海で半年間、中国茶についてじっくり学んでみよう…て、そう決心したの」

驚く宮緒の手を由貴子がそっと握りしめた。
「…もちろん、貴方が上海にいたからよ。
だからここに来たいと思ったの。
貴方の側で暮らしながら、お茶の勉強をしたい…て。
…迷惑じゃなかったら…だけれど…」
やや不安そうな由貴子の貌を堪らずにその手で触れる。
「迷惑な訳ないでしょう。
…僕は今、すごく感激している。
…それから…」
由貴子の陶器のように滑らかな白い頰を軽く抓る。
「…早く二人きりになりたい…て思っている」
「…宮緒さん…」

由貴子は茉莉梅の花がふわりと花開くように微笑った。





/198ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ