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星逢いの灯台守
第4章 上海ローズ
「…ここが僕の部屋です」
宮緒は由貴子を旧フランス租界にある自宅のアパルトマンに案内した。

宮緒の住まいは旧フランス租界の中央に位置する静安公園の裏手にある古い石造りの洋館である。
かつて大戦前にユダヤ系の不動産王が道楽で建てたというアール・デコ様式とユーラシアンな意匠が混ざり合ったレトロモダンな建物であった。

ビジネスパートナーの黄が所有している不動産のひとつで、宮緒が上海に赴任して直ぐに紹介された物件だ。
…若いツバメと共に逃げられてしまった若い愛人に与えていた部屋のひとつらしい。
「…ヴァンクリーフのブルーダイヤモンドとエメラルドと共にドロンだよ。まったく、若い娘は油断がならないな。
…遊ばせておくのももったいないからね。
管理人のつもりで住んでくれないか」
黄は鷹揚に笑っていた。

租界時代の建物だから天井が高い。
ゆったりとプロペラのファンが回っている。
広々とした居間にはクラシカルな暖炉も付いていた。
メインのベッドルームのほかにゆったりとしたゲストルームがあり、バスルームも二つある。
バルコニーにはサンルーム付きだ。

「勤務先のホテルにもっと近いマンションもあったんだけど、フランス租界の雰囲気が気に入ってね…。
エレベーターまで旧式で手動なのはびっくりしたけれど…」

由貴子は居間を見渡してうっとりとした声を上げた。
「…素敵だわ…。まるで昔の映画に出てくるようなお部屋だわ…」

租界時代の富裕な外国人の住まいだった名残は内装や意匠、造り付けの家具にまだ残っている。
ガレやラリックの照明やガラス工芸品もことも無げに置かれていた。
シーレやビアズリーの絵画も…恐らくは本物だろう。
黄が買いあさり、そのまま画廊のように飾らせていたらしい。

…アール・デコ様式のどこか耽美的かつデカダンスなこのアパルトマンに、由貴子の優美で艶めいた姿はそのまま溶け込むように似合っていた。



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