この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
星逢いの灯台守
第4章 上海ローズ
翌朝、目覚めると寝台の中に由貴子の姿はなかった。
「…由貴子?」
宮緒はバスローブ姿のまま、急いで寝室を出る。
長い廊下を歩き、ダイニングへ続く扉を押し開く。
「…美味い…。
こんなに美味い味噌汁を飲んだのは久々ですよ」
…珍しく兄の弾むような明るい声が聞こえた。
「お口に合って良かったですわ。
近くに日本食のスーパーマーケットがあって和食の材料はほぼ揃うのです。
…即席ですけれど、胡瓜と茄子のお漬物もよろしければ召し上がってくださいな」
「…浅漬けか…。
久しぶりだな。
…昔は手作りのぬか漬けや浅漬けや…色々手の込んだ朝ご飯を食べていたんですけれどね…」
…しみじみとした声が響く。
「…あら…。片岡さんの以前の恋人はお料理上手だったのですね」
「ええ。食堂を切り盛りしていたひとでね。
美味しいものをたくさん作ってくれました。
…ああ、懐かしいなあ…。
どうしているかなあ…彼女は…」
「…まあ…。…あの、どうしてお別れに…」
荒々しく足音を踏み鳴らしダイニングルームに駆け込む。
「に、兄さん!」
二人が同時に振り返る。
「あら、宮緒さん。起きていらしたのね」
「う、うん」
由貴子が宮緒の乱れた前髪を直してやりながら優しく告げる。
「シャワーを浴びていらして。
お味噌汁を温めるわ。今日は貴方のお好きな莢隠元とお豆腐のお味噌汁よ」
「…ありがとう、由貴子…」
…今朝の由貴子は髪をきちんと束髪に結い上げ、珍しく和服…結城紬に白い割烹着姿だ。
艶めいたチャイナドレス姿とはまた異なり、気品と風情に溢れていて思わず見惚れる。
由貴子がキッチンに入ったのを潮に、テーブルの兄を睨みつける。
「…兄さん…!」
片岡は端整な眉を少しだけ上げて、愉快そうに片頬で笑った。
「お前は幸せ者だな。
美人で料理上手…。
こんなに出来た恋人は滅多にいないぞ」
…そうして、宮緒にしか聞こえないほどの小さな声で囁いた。
「…加えて床上手らしいしな」
「…由貴子?」
宮緒はバスローブ姿のまま、急いで寝室を出る。
長い廊下を歩き、ダイニングへ続く扉を押し開く。
「…美味い…。
こんなに美味い味噌汁を飲んだのは久々ですよ」
…珍しく兄の弾むような明るい声が聞こえた。
「お口に合って良かったですわ。
近くに日本食のスーパーマーケットがあって和食の材料はほぼ揃うのです。
…即席ですけれど、胡瓜と茄子のお漬物もよろしければ召し上がってくださいな」
「…浅漬けか…。
久しぶりだな。
…昔は手作りのぬか漬けや浅漬けや…色々手の込んだ朝ご飯を食べていたんですけれどね…」
…しみじみとした声が響く。
「…あら…。片岡さんの以前の恋人はお料理上手だったのですね」
「ええ。食堂を切り盛りしていたひとでね。
美味しいものをたくさん作ってくれました。
…ああ、懐かしいなあ…。
どうしているかなあ…彼女は…」
「…まあ…。…あの、どうしてお別れに…」
荒々しく足音を踏み鳴らしダイニングルームに駆け込む。
「に、兄さん!」
二人が同時に振り返る。
「あら、宮緒さん。起きていらしたのね」
「う、うん」
由貴子が宮緒の乱れた前髪を直してやりながら優しく告げる。
「シャワーを浴びていらして。
お味噌汁を温めるわ。今日は貴方のお好きな莢隠元とお豆腐のお味噌汁よ」
「…ありがとう、由貴子…」
…今朝の由貴子は髪をきちんと束髪に結い上げ、珍しく和服…結城紬に白い割烹着姿だ。
艶めいたチャイナドレス姿とはまた異なり、気品と風情に溢れていて思わず見惚れる。
由貴子がキッチンに入ったのを潮に、テーブルの兄を睨みつける。
「…兄さん…!」
片岡は端整な眉を少しだけ上げて、愉快そうに片頬で笑った。
「お前は幸せ者だな。
美人で料理上手…。
こんなに出来た恋人は滅多にいないぞ」
…そうして、宮緒にしか聞こえないほどの小さな声で囁いた。
「…加えて床上手らしいしな」