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星逢いの灯台守
第4章 上海ローズ
「…兄さん!僕は大概忍耐強いですが、怒る時は怒りますよ!」
宮緒は憤然としながら片岡と肩を並べ、執務室へ続く勤務先のホテル…上海ビクトリア酒店の西翼廊下を足早に歩いた。
「澄佳さんのことは内緒にしてください!
それから由貴子を不埒な眼で見るのはやめてください!」
片岡は可笑しそうに笑い声を立てた。
「お前が俺に怒るのなんて初めてだな。
…それだけでもあの美しくもやたらに色っぽい未亡人はたいした人物だ」
「兄さん!そういう言い方がいやらしいんです!」
「未亡人は事実だろう?」
片岡は平然と宮緒を見遣り、執務室の重厚なドアを閉めた。
「…しかしお前もよくよく変わった毛色の恋愛しか出来ない体質らしいな」
「は?」
黒革張りのソファにどさりと腰を下ろすと、片岡はすらすらと詩を暗唱するかのように諳んじ始める。
「…清瀧由貴子。四十四歳。一女あり。
義理の息子は有名大学准教授にして英文学研究者の第一人者。
亡くなった夫は著名な生物学者。…ノーベル賞級の発明もしている。
夫が残した本郷の家屋敷及び持ち株などの総資産は約二億円以上。
ご本人は裏千家流の師範代…。
その美貌と実力で茶の湯の世界ではかなりの有名人らしい。
…これほどの女がお前とすんなり再婚するかな?」
宮緒は憤然としながら片岡と肩を並べ、執務室へ続く勤務先のホテル…上海ビクトリア酒店の西翼廊下を足早に歩いた。
「澄佳さんのことは内緒にしてください!
それから由貴子を不埒な眼で見るのはやめてください!」
片岡は可笑しそうに笑い声を立てた。
「お前が俺に怒るのなんて初めてだな。
…それだけでもあの美しくもやたらに色っぽい未亡人はたいした人物だ」
「兄さん!そういう言い方がいやらしいんです!」
「未亡人は事実だろう?」
片岡は平然と宮緒を見遣り、執務室の重厚なドアを閉めた。
「…しかしお前もよくよく変わった毛色の恋愛しか出来ない体質らしいな」
「は?」
黒革張りのソファにどさりと腰を下ろすと、片岡はすらすらと詩を暗唱するかのように諳んじ始める。
「…清瀧由貴子。四十四歳。一女あり。
義理の息子は有名大学准教授にして英文学研究者の第一人者。
亡くなった夫は著名な生物学者。…ノーベル賞級の発明もしている。
夫が残した本郷の家屋敷及び持ち株などの総資産は約二億円以上。
ご本人は裏千家流の師範代…。
その美貌と実力で茶の湯の世界ではかなりの有名人らしい。
…これほどの女がお前とすんなり再婚するかな?」