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星逢いの灯台守
第4章 上海ローズ
宮緒は端整な眉を顰めた。
「調べたんですか?由貴子のことを…」
「当然だ。
大切な弟の恋人となればな」
「兄さん…!」
気色ばむ宮緒を手を挙げて制する。
「由貴子さんは素晴らしいひとだ。
飛び切りの美貌、品格、立ち居振る舞い…。
生まれ育ちも良くて知性もある。
優しい人柄だしお前が強く惹かれる気持ちは分かる。
お前のことも由貴子さんは愛しているのだろう。
だが、彼女はお前と結婚するだろうか?
金銭的な損得勘定のことではない。
きっとそんな下世話な欲とは無縁なひとだろう。
…彼女のお嬢さんのために、お前とは結婚しないのではないかと思うのだ」
宮緒は息を飲む。
…「娘には父親の名前を残してやりたいの…。
自分の恋のために、娘の人生を変えたくはないの…」
そう告げた由貴子の言葉が胸に蘇った。
「…それは…分かっています。
僕は由貴子も娘さんの気持ちを尊重したいです。
…だから別に正式に籍は入れなくてもいいとも思っています。
事実婚で構わないと…。
そう由貴子に言うつもりです」
片岡はじっと宮緒を見上げ、ゆっくりとソファから立ち上がった。
「…お前の方はどうなんだ?」
「…え?」
「お前の希望だよ。
彼女との子どもが欲しいとは思わないのか?」
まるで先日の由貴子との会話を見透かされているようで二の句が告げない。
…『私は貴方の子どもを産むことはできないのよ…』
由貴子の哀しげな声が、想い起こされた。
「…僕は…」
言いかけたのを片岡が遮った。
「俺は…澄佳との子どもが欲しかったよ」
思わぬ言葉に眼を見張る。
「兄さん…」
「欲しかったよ。
…あんなに一人の女の子どもが欲しいと願ったことはなかった…。
…例え拒まれてもね…」
どこか微かな痛みを感じさせるような薄い微笑みを浮かべる。
「僕は違います。彼女がいればそれでいい。
子どもなど…」
「ずっと同じ気持ちでいる自信はあるか?」
「兄さん…?」
少しの嫌味も冷ややかさもない真摯な…柔らかな温もりを感じさせる声で、兄は告げた。
「…先のことなど誰にも分からない。
もしお前がこの先子どもを欲した時に、一番傷つくのは由貴子さんだ。
…そこまで考えて、結論を出しなさい」
「調べたんですか?由貴子のことを…」
「当然だ。
大切な弟の恋人となればな」
「兄さん…!」
気色ばむ宮緒を手を挙げて制する。
「由貴子さんは素晴らしいひとだ。
飛び切りの美貌、品格、立ち居振る舞い…。
生まれ育ちも良くて知性もある。
優しい人柄だしお前が強く惹かれる気持ちは分かる。
お前のことも由貴子さんは愛しているのだろう。
だが、彼女はお前と結婚するだろうか?
金銭的な損得勘定のことではない。
きっとそんな下世話な欲とは無縁なひとだろう。
…彼女のお嬢さんのために、お前とは結婚しないのではないかと思うのだ」
宮緒は息を飲む。
…「娘には父親の名前を残してやりたいの…。
自分の恋のために、娘の人生を変えたくはないの…」
そう告げた由貴子の言葉が胸に蘇った。
「…それは…分かっています。
僕は由貴子も娘さんの気持ちを尊重したいです。
…だから別に正式に籍は入れなくてもいいとも思っています。
事実婚で構わないと…。
そう由貴子に言うつもりです」
片岡はじっと宮緒を見上げ、ゆっくりとソファから立ち上がった。
「…お前の方はどうなんだ?」
「…え?」
「お前の希望だよ。
彼女との子どもが欲しいとは思わないのか?」
まるで先日の由貴子との会話を見透かされているようで二の句が告げない。
…『私は貴方の子どもを産むことはできないのよ…』
由貴子の哀しげな声が、想い起こされた。
「…僕は…」
言いかけたのを片岡が遮った。
「俺は…澄佳との子どもが欲しかったよ」
思わぬ言葉に眼を見張る。
「兄さん…」
「欲しかったよ。
…あんなに一人の女の子どもが欲しいと願ったことはなかった…。
…例え拒まれてもね…」
どこか微かな痛みを感じさせるような薄い微笑みを浮かべる。
「僕は違います。彼女がいればそれでいい。
子どもなど…」
「ずっと同じ気持ちでいる自信はあるか?」
「兄さん…?」
少しの嫌味も冷ややかさもない真摯な…柔らかな温もりを感じさせる声で、兄は告げた。
「…先のことなど誰にも分からない。
もしお前がこの先子どもを欲した時に、一番傷つくのは由貴子さんだ。
…そこまで考えて、結論を出しなさい」