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星逢いの灯台守
第4章 上海ローズ
「…ほう…」
「…私、自分の人生に深い孤独を感じていたのです。
訳あって娘は私の元から離れ、息子のお嫁様のお世話になって暮らし始めていました。
…娘はとても楽しそうで生き生きしていて…。
安心の反面、私の心は孤独に満ちていました。
…もう私は、母親としても…そして女としても誰からも求められることはないのだろうと…。
しんしんと冷える孤独を感じていたのです」

…つと、視線を窓の外の煌めく夜景に移す。
まるで作り物のように輝きを放つ高層ビル群のイリュミネーションと、この世ならぬ稀有な美貌の由貴子は一枚絵のようにそこに存在していた。
「…そんな時に宮緒さんに出会ったのです。
私は…宮緒さんにお会いして初めて、自分がどんなにひとの温もりを求めていたのかを知りました。
そして、女としての悦びも…宮緒さんは初めて知らしめてくれたのです」
由貴子の高貴な美貌があでやかに薫り立つように艶めく。

「…身体だけではありません。
宮緒さんは私を冷え切った心ごと、抱きしめてくれたのです…」
「…由貴子…!」
堪らずにテーブルの上の由貴子の白い手を握りしめる。
由貴子が宮緒を見上げ、寂しげな…けれど切ないまでに愛おしげな微笑みをその切れ長の目尻に浮かべた。

「…けれど、私が宮緒さんに相応しい女ではないことは、よく分かっております。
私には娘がおりますし、娘が大切です。
…それに…何より私は宮緒さんより八つも歳上です。
私などよりもっと若くて可愛らしいお嬢さんがきっと宮緒さんには相応しいのだと言うことも…」
「…何を言っているの、由貴子…!」
気色ばむ宮緒を他所に、由貴子は片岡をひたりと見つめた。

「お兄様は、私と宮緒さんを別れさせたいとお考えなのでしょう?」
「由貴子…!
何を言うんだ。兄さんはそんなこと、思っていないよ」
必死で言い聞かせようとする。

由貴子の話を最後まで黙って聞いたのち、片岡は明るい笑みを浮かべたまま、口を開いた。

「…真紘。少しの間、由貴子さんを借りてもいいか?」
「え?」
唐突な申し出に、戸惑う。
片岡はゆっくりと立ち上がると、成熟した大人の物腰のままに優雅に手を差し伸べた。

「…由貴子さん。
私と一曲、踊っていただけませんか?」
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